「原発って分からないことだらけですよ。怪物だなあと思いました。建屋から出て、振り返る。とんでもなく巨大です。怪物だなあ、とんでもないもの造ったなあ、と」
「大学で原子力工学やってる先生には実感がつかめないんじゃないかな。理屈で割り切れないことが現場にはいっぱい転がっているんです。極端なこといえば、全貌を分かっているエンジニアは世界に一人もいないと思います」
以上の言葉は、原発設計や柏崎刈羽原発建設時の技術統括責任者、福島第二原発のメンテナンスなどを担当した、元東芝社員の小倉志郎氏が語ったものだ。
さらに彼は、こうも話す。
昔の原発より新しい原発の方が危ない。なぜならコストダウンを徹底しているからだ、と。「でも現場に入らない人にはそんな実感つかめてないですよね」とも。
以上はけさ(9月16日)の朝日新聞連載「プロメテウスの罠・追いかける男6」からの引用である。
「追いかける男」はこの連載のなかでも、ひときわ鋭い切れ味で、ジャーナリズムの本領を発揮している。
元東電社員で、福島第一の原子炉を動かしていた木村俊雄氏の「告発」を軸に本シリーズは展開しているが、ここで述べられたものだけで、原発事故責任を問えるに十分な証拠となるだろう。
たとえば津波が来る前に、地震で炉心と周辺の配管や機器が壊れ冷却不能になっていたのでは、ということ、そしてそのデータを東電は持っているのに一部だけしか出さず、肝腎な部分を隠ぺいしていること、などだ。
検察は不起訴としたけれど、木村氏や小倉氏など、原発現場で従事した技術者や作業員などから証拠調べの聴取をしたのだろうか。
(参考資料『朝日新聞』「プロメテウスの罠」2013年9月16日朝刊)
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