2012年1月30日月曜日

放射線を浴びたX年後の日本人の末路


【ただちに危険だ! 原発通信】№38

 2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!

昨夜(29日深夜)放送されたNNNドキュメント‘123.11大震災シリーズ27 放射線を浴びたX年後 ビキニ水爆実験、そして」(南海放送制作)を観た。

そして、ビキニ被災者とフクイチ被災者のX年後の姿が重なった。この番組の制作に年をかけたが、それだけの時間を費やしただけの価値ある、そして非常に考えさせられる内容だった。

ぼくたちがマーシャル諸島ビキニ環礁水爆実験での被災者といえばすぐに想い浮かべるのが「第五福竜丸」である。

――1954月、このマグロ漁船の乗組員はアメリカの水爆実験の死の灰をモロに浴び、半年後この船の乗組員である久保山無線長(当時40歳)が放射線障害で亡くなった――という印象と記憶だ。

しかし、ビキニ被災者は第五福竜丸の乗組員だけではなかった。当時、延べ992隻の漁船が被曝した魚を廃棄した。乗組員241名が被災し、1988月現在で77名が死亡し、この内61名ががんによるものである。なお、ウィキペディアによれば2万人が被曝したという。

たとえば、その漁船の一つ「第五住吉丸」の乗組員11名の内名ががん(胃がん名、肺がん名)で亡くなっている。その廃棄された被災から35年後の第五住吉丸の船体から、セシウム137、ストロンチウム90などが検出された。

番組は当時の乗組員やその妻たちから生々しいことばを聴きだす。「新生丸」乗組員「船に乗っていた人間がどんどん50代、60代で亡くなっていく」。乗組員の妻「皆、若くして、ほとんど亡くなりました」。「バタバタと死んだ」。

そして、死んでいった彼らは、日本政府やアメリカ政府からなんの救済もなく、また国民に知らされることもなかった。そう、闇に葬られた被曝者である。被曝から58年後にようやくテレビによって、この実態があきらかになったわけだ。

このビキニ水爆実験からか月後、日本政府は突如「まぐろ放射線検査を中止」することを決める。その日後、アメリカの責任を追及しないことを条件に、アメリカが200万ドルの見舞金(賠償金という名目ではない)を支払うことで、日本政府はこの事件の幕を引いたのである。

ぼくはこのビキニ被災とフクイチ被災とがオーバーラップする。これから数年、数十年たって、東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染(外部被曝、内部被曝)による病気や死亡であっても、「因果関係は認められない」とか「たばこやアルコール、ストレスなど他の原因によるがん」、あるいはこのフクイチ事故そのものが風化していることなどによって、救済されることなく、闇に葬られるかもしれないと。

そして、フクイチ事故の被曝者、避難者への東京電力の態度が、アメリカ政府と重なるのだ。そう東電の原発が撒き散らした放射性物質を「無主物」と責任逃れのために言い張る東電と、7億円(200万ドル)で責任を逃れたアメリカ政府である。

また、日本社会の「空気」も同じだ。漁船の乗組員の妻は「被曝して補償を求めた船員は船には乗れない時代だった」と語っている。広島・長崎の被曝者、水俣病の被害者など、この社会では被害者が差別や偏見を受けるという実態がある。

番組の最後、乗組員の妻はこう語る。「いつの時代にも弱いものにしわ寄せがくるというのは、いつの時代も一緒」この「いつの時代も」とはこのフクイチ事故の「現在」もである。

また、生存している乗組員の一人は、自分が放射線被害の影響が出ていないことについて、「帽子、カッパを着て防護していた」と述べる。防水のための服装が思わぬ救いになったのだ。この事実も非常に示唆的だ。

現在、すくなくとも年間1ミリシーベルト以上の放射線があるところでは、外に出るときはマスクをして外部被曝を、そして口にする飲み物、食べものは十分に注意して、たとえ微量といわれる線量でも内部被曝を避けるということが自分や子どもの身をまもるということを、この乗組員は教えてくれている。

果たして、フクイチを経験した日本人は、2011.3.11からX年後、どういう末路をたどっていることか。

なお、この番組は11時(BS日テレ)、18時CS「日テレNWS24」で再放送される。

2012年1月23日月曜日

太田光クンに告ぐ! 「原発問題は爆笑問題よりシリアスなのだ」

【ただちに危険だ! 原発通信】№37

2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!

「(原発の影響で)もう日本に住めるところはないなどと、がなり立てていた表現者が許せなかった。なんとか現代文明を肯定的に書きたかった」(「日刊スポーツ」122日)爆笑問題の太田光が小説『文明の子』の発売会見でこんな発言をしたらしい。

まあ、その表現者を許せないのも、現代文明を肯定したいのも、もちろん太田クンの自由である。だけど、もうちょっとで、太田クンがそう言えない事態になっていたかもしれないのだ。しかも、それは終わったことではなく、現在も進行中なのだ。そのことを、太田クンとここで確認したい。


菅政権の「最悪のシナリオ」の存在は知っているよね。昨年3月のフクイチ事故で作業員すべてが現場から退避して原子炉が爆発し、大量の放射性物質が1年間、周囲250キロから300キロにわたって放出した場合、首都圏3千万人を含む、東日本の住民を避難させることを想定したものだ。

これはかなり現実味を帯びており、現に東電の当時の社長である清水は、政府に何度も作業員を第一原発から第二原発へ退避させたいという電話をしている。当時の事態はそこまで切迫していた。

もし、これほどの住民を西日本に避難させる事態になれば、日本は国家としての機能を喪失する。まちがいなく無政府状態となる。だいいち、数千万の住民を短期間に移動させることなど不可能だ。そう、あともうちょっとで、日本は終わっていたのだ。

そうなれば、太田クンは『文明の子』なる小説を書いている場合ではなかったし、それを発行する出版社も印刷所も機能していなかっただろう。命からがら、でも運よく避難した太田クンは、避難所の薄暗い体育館の片隅で、『文明の子』ではなく、『原発の子』とか『原始の子』、あるいは『反文明の子』という小説を構想していたかもしれない。

しかも、フクイチ事故はまだ続いているのだ。もちろん収束なんてしてやしない。ことし元日の震度4の地震でフクイチ4号機の燃料プールから水がなくなりかけた。もし、あのまま燃料プールに水が供給されないと、「超最悪のシナリオ」が必要となることは太田クンにも理解できるはずだ。しかもたった震度4だよ。この程度やそれ以上の地震はこれから短期間にいくらでも起こるだろう。

さらに、いま多くの地震研究者が、日本中いたるところに甚大な被害をあたえるM7~M9クラスの地震の発生が近いことを予知している。その地震で揺れる土地の上には、日本全国くまなく原発や原子力施設がある。しかも、ほとんどの原発の耐震設計は、想定される震度に耐えられない。いや、「想定」ではなく、「事実」として福島第一原発が耐えられないことを実証してみせたよね。おまけにどの原発も大津波がやってくる海岸線に建っている。

そしてさらに、いま緊急対策を迫られているのが「原子炉圧力容器の照射脆化」だ。原子炉の老朽化で圧力容器が中性子線によって劣化(脆化)して、容器がパリンと割れてしまう危険性だ。そうなれば原子炉大爆発でフクイチやチェルノブイリをはるかに超える放射能がばらまかれてしまう。この危険性を指摘するのは金属材料学の権威、東京大学名誉教授の井野博満氏である。

その老朽化した原子炉をもつ原発として、真っ先に挙げられるが、佐賀の玄海原発1号機(あのやらせの九州電力)だ。九電はこの「脆化」が想定をオーバーしていることを承知しているが、この事実を九電は保安院に伝えず、保安院も電力会社に問い合わせる義務がないという理由で知らなかった、と述べるしまつ。この「脆化」は玄海原発だけではなく、福井の美浜12号機、大飯2号機、高浜1号機(以上関西電力)、敦賀1号機(日本原子力発電)も同様だ。

なお、太田クン。ぼくはきみの芸風が嫌いじゃない。どちらかというと、好みだ。だけど、あの会見での発言はいただけない。原発問題は爆笑問題よりシリアスなのだ。原発問題は「場」と「時」の喪失を意味する。そう人間が何百年、何千年、何万年と住めなくなるのだから。住めなくなると、そこで一切合財の人間活動はできない。もちろん「文明活動」もそうだし、お笑いの「文化活動」だってそうだ。あたりまえだ。原発問題はなによりシリアスで、なによりラジカルで、そしてなによりプライオリティが高いのだ。


2012年1月16日月曜日

大成功!「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」 この脱原発エネルギーを2012.3.11へ

【ただちに危険だ! 原発通信】№36

2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!

14、15日に開催された「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」が両日で11500人が集まり大成功した。この「会議」を成功にみちびいたすべてのスタッフ、発言者、参加者に満腔から感謝します。ぼくはこの「原発のない世界のための横浜宣言」に賛成し、この「宣言」に則って脱原発のための実践をやっていきたい。2012年3月11日の「脱原発デモ」を絶対に成功させよう!
下記に「横浜宣言」を転載します。

 [原発のない世界のための横浜宣言]

 2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原発のメルトダウン事故は、日本の人々に多大な苦難をもたらしたのみならず、地球全体にわたって放射能汚染を広げました。これは、原子力がもたらす長期的な健康、環境、経済への危険についての警鐘を、世界中に対して鳴らしています。

 スリーマイル島やチェルノブイリと同様、福島における事故は、核技術はいかなる小さな過失をも許さないものであり、ひとたび事故が起こればそれは取り戻しのつかない結果をもたらすということを改めて私たちに見せつけました。福島における事故の現状は、日本政府が言うように収束などしてはいません。原発はいまだに不安定であり、労働者はきわめて過酷な業務を余儀なくされています。

 放射能汚染は広がっています。これは地域的また地球的な緊急事態です。人々は子どもとともに避難するか、あるいは許容しがたい健康上の危険と長期化する放射線被ばくの下で生活することを強いられています。福島県において母親の母乳と子どもたちの尿から放射性物質が検出されたことは、将来の世代を含む生命が脅かされていることを物語っています。地域経済は破壊されました。

 核燃料の連鎖におけるすべての段階でヒバクシャが生み出されています。ヒバクシャとはもともと広島・長崎の原爆被害者を指す言葉でしたが、その後あらゆる放射能被ばくの被害者を意味して用いられるようになりました。ウラン採掘、核実験、原発事故、核廃棄物の貯蔵と輸送などすべてにおいてヒバクシャが生み出されてきたのです。

 これら世界中のヒバクシャの経験は、隠蔽され、不名誉と沈黙を強いられるものでした。情報、健康記録、治療および補償を得る権利は、「国家安全保障」あるいはコストを理由に、不十分であるか否定されてきました。説明責任の欠如は、日本に限った問題ではありません。あらゆる国の原子力産業において、政府と原子力産業の腐敗した関係に伴う問題が、本質的に存在するのです。

 私たちはいま岐路にあります。私たちは、核燃料の連鎖と決別し、効率がよく、健康と環境を脅かすことのない、再生可能で持続可能なエネルギーを選ぶことができます。将来の世代のためにそれを選び取ることが、私たちの責任です。原子力からの脱却は核兵器廃絶とも共鳴し合い、世界の平和に貢献します。

 福島の人々への世界的な連帯と「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」に集まった人々の精神は、人々のつながりこそが私たちの未来を築く土台であることを示しています。

私たちは、次のことを呼びかけます。



1. 東京電力福島第一原発の事故で被害をうけた人々の権利を守ること。避難の権利、健康対策、除染、補償を受ける権利、そして、2011年3月11日以前と同様の水準で生活する権利が保障されなければなりません。

2. 日本政府および東京電力は完全に情報公開し、説明責任を含むあらゆる責任を果たすこと。これまで行ってきた情報の隠蔽や矛盾した情報の提供を改め、公衆に情報を普及する独立機関を設置すること。

3. 人体、食料、水、土壌および空間における継続的かつ包括的な放射線測定とデータ収集を行い、住民の放射線被ばくを最小化するための緊急かつ必要な措置を公衆に知らせること。データ収集は数世代にわたって必要であり、省庁間連携による取り組みと国際社会による支援が必要です。原子力産業から利益を得てきた企業は、これらのコストを分担しなければなりません。

4. ウラン採掘から廃棄物に至る核燃料サイクルから段階的に脱却し、原発を廃炉にしていくための世界的な工程表をつくること。「安全神話」は崩れました。核技術はこれまでも決して安全ではなく、莫大な公的補助金無しには生き延びて来られるものではありませんでした。自然エネルギーはすでに立証されており、固定価格買い取り制度のような地域経済を支援する政策さえ実施されれば、地域において地方分権的な形で実施可能になっています。

5. 現在稼働が停止されている日本の原発を再稼働すべきではないこと。法制化された固定価格買い取り制度を実施し、送発電分離などを通じて自然エネルギーを拡大すれば、日本のエネルギー需要は満たすことができます。

6. アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパなどの途上国に対して原発やその部品を輸出することを禁止すること。

7. 原子力に頼らない社会をつくるために重要な役割を果たしている地方自治体を支援すること。コミュニティを強化し地方分権とボトムアップを進め、経済、人種、性別に基づく差別のない社会をつくるために、地方自治体の長、地方議会および市民社会の間の連帯を強めましょう。

8. 2012年3月11日に世界中で行動、デモ、セミナー、メディアイベントなどを行い、福島の人々が置かれている状況に抗議し、原発のない世界を呼びかけること。

2012年1月11日水曜日

「インフル予防」ではなく「脱原発・反格差予防」のための「集会禁止」法案だろ

【ただちに危険だ! 原発通信】№35


2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!

野田政権は年末の福島原発事故「収束宣言」につづいて、年始そうそうに「集会禁止」「外出自粛要請」の法案を通常国家へ提出するという。そして、この法律の起案理由というのが、なんとインフルエンザ流行時に強制力をもって対応するためだとか。

もう、あまりの見えすいた「理由」に苦笑してしまう。あきらかに、この法案って、脱原発と反格差への予防的な弾圧だよね。これから3.111周年に向かって反原発の高揚、さらには失業者や低賃金労働の増加によって、世論が「ただちに原発やめろ」「格差をなくせ」と高まることは必至だ。それを政府権力・原発利権集団がビビって、法律で強権的に予め抑え込もうっていう魂胆だよね。

そしてひねりだしたのが、「インフル予防のための集会禁止」ときたもんだ。強毒性インフルが流行したら、集会を禁止するというのは、要するに人が集まってインフルが伝染するのを防止するためだ。

であれば、もう集会にかぎらず、電車・バス・飛行機・船等の運輸手段、野球場、サッカー場、体育館、コンサート、劇場、それにスーパー、デパート、コンビニ、美容院、理容院、さらに駅やターミナルなど、それから地域の町内会や村の集まりなども集会だし、組合や会社の会議、飲み屋での宴会も広義の集会だろうから、これらもすべて禁止しなければいけないことになる。

だって、インフルが感染しやすい人が集まる空間なんだもの。でないと、インフル感染を防ぐという法案の趣旨に反するからね。しかも「外出禁止自粛要請」するとなれば、これはもう戒厳令だ。インフルエンザで戒厳令をだす政権って、古今東西あったかな。

しかしそれにしても、もうびっくりするほど野田政権ってオツムが痛い。原発事故の収束もなにも、まだいままで以上に核爆発の危険性もあるのに「収束宣言」してみたり、そして脱原発や反格差の集会を禁止したいために「インフル感染防止のため」なんて法案を出したり。こんなことをすると、国民はどんどん信頼をなくすよね。

たぶん、野田やその政権首脳、それに官僚は、日本国民をバカだと思ってるんだよ。でないと、こんな愚かなことを連発しないよ。「集会禁止」「外出自粛要請」なんて、まるでアラブや北朝鮮などの独裁政権のような雰囲気だね。

原発再稼働という無理を通すために、いったいどれだけの嘘を重ね、どれだけの罪もない人の健康と生命と財産を奪うのか。たかが一握りの原発利権集団のエゴのためにだ。

ここで、野田佳彦くんに「日本国憲法」について、お勉強してもらおう。なお、「憲法」とは、「国家の統治機構などの基本的事項を定めた最高法規。他の法律や命令によって変更することはできない」と『明鏡国語辞典』に載っているからね。

日本国憲法 
第三章 国民の権利及び義務 
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


2012年1月8日日曜日

「これって、原発再開のための造語でしょうか?」 原子力村の村民語を翻訳しました。

【ただちに危険だ! 原発通信】№34


2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!


きのう自宅のポストに一包の大きな封筒が入っていた。カタログハウスの『通販生活』が送られてきたのだ。昨年、カタログハウスのCMがテレビ朝日によって拒絶された「事象」を契機に、『通販生活』の定期購読者になったしだい。

ポストから白い封筒を抜き取り、裏面が眼に入って「おっ」とびっくりした。それは原子力ムラの「専門用語」の解説だった。下記にコピーしておいたので、みなさんよく学習しましょう。

まあ、こういう常用されている表現を言い換えるのは、企業や役所がむかしから得意としてきたことなんだけど。たとえば公共料金値上げを「料金改定」と言ったりね。このあたりはご愛敬なんだが、原発が爆発しているのに「爆発的事象」とか、地域が放射能汚染されて将来の健康被害が憂慮されるのに「ただちに健康への影響はない」なんて官房長官が発言するのは、犯罪的だよね。

それにしても、封筒の裏を媒体に使って、こんなメッセージをするなんて、カタログハウスってセンスあるな。べつにこの会社の宣伝をするわけじゃないけど、この『通販生活』(2012春号)のコンテンツもすごいよ。ぼくも雑誌をつくっていたので、その「マガジン」としてのクオリティの高さがよくわかる。

まず、菅直人(そう前首相のね)のインタビューがあって、そのインタビュアーが山口二郎(北大教授)だよ。これは大新聞の記者のヘタなインタビューより、よっぽど鋭い。

それから特集の「ふくしまっ子たちの健康を守るために」として取材するのが、チェルノブイリの医療活動に参加した経験をもつ、山下俊一(ご存知ミスター100ミリシーベルト)、武市宣雄、菅谷昭、児玉龍彦の各氏だ。

そしてなによりセンスがあるのが、山下氏のインタビュアーが日本チェルノブイリ連帯基金の事務局長である神谷さだ子氏であることだ。このインタビューはこんな双方のジャブからスタートする。

山下 お久しぶりです。10年12月のチェルノブイリの講演会以来ですね。

神谷 はい、通販生活の編集部から、「あなたは山下先生と顔なじみなんだから、市民グループが抱いている山下先生への不信感を率直にぶつけてホンネを聞きだしてこい」と。私も個人として率直にお話ししたいと思っていたところだったので、ありがたいチャンスだと思ってやってきました。

山下 参ったなあ、あなたまで、山下は原発事故の影響をなるべく小さく見せて原発再開を促進させようとする放射能安全神話論者だと決めつけるんですか(苦笑)。

このほかに、「地震多発国の日本に安全な原発なんてあり得ない。」では、サイエンスライターで原子炉圧力容器の設計に携わった田中三彦氏や、15年以内にマグニチュード9級の地震が8割超の確率で起こるという新潟大学名誉教授の立石雅昭氏なども登場している。

また巻頭の沖縄・普天間基地のルポには森まゆみ氏だよ。あの「谷根千」のね。森さんて、東京下町の聞き書きや地方の旅行記は知っていたけど、この手の取材もするんだ、と驚いたしだい。

このカタログハウスとか「原発に頼らない安心できる社会へ」と宣言して東電の電気を使わないことにした城南信用金庫など、こういう企業体はどんどん応援したいものだ。





これって、原発再開のための造語でしょうか?
原子力界で多用される主な「専門用語」
2011124日付東京新聞・朝刊を参考に作成。


【事象】事故やトラブルのこと
危険性を小さくみせようとする典型的な用語。「事故」や「トラブル」の代わりに使う。

【高経年化】老朽化のこと
原発の「老朽化」。会見で記者が「老朽化」と発言すると、「高経年化」と言い直されることもしばしば。

【冠水】水棺のこと
福島第一原発の廃炉手法。「水棺」が使われ出したころ、「棺」を嫌ってか東電が「弊社はこう呼ぶ」と命名。

【滞留水】汚染水のこと
建屋にたまった高濃度の放射性汚染水。穏やかな表現だが表面線量は毎時2000ミリシーベルト超。

【燃料の損傷】メルトダウンもあるのに
核燃料が傷ついているだけのような印象を与えるが、福島第一原発13号機では溶け落ちている。

【廃スラッジ】放射性汚泥のこと
汚染水浄化装置で発生する放射性汚泥。ただのゴミのような呼称だが、実は超高濃度。

【バックエンド】核廃棄物処理業務
使用済み核燃料の再処理を含む核廃棄物の処理業務全般のこと。字面からの類推はまったく不可能。

【MOX燃料】P=プルトニウム抜き
毒性の強いプルトニウムの使用が最大の特徴なのに、それを感じさせないように「P」を抜いた呼称。直訳は「混合酸化物燃料」。

【クリアランス】核ごみを一般ごみ扱いする制度なのに
一定の線量未満の核廃棄物扱いする法制度。「クリア」といいながら放射性物質は含む。

【冷温停止状態】高濃度汚染水が大量にある状態なのに
健全な原子炉に使われる「冷温停止」に「状態」をつけ、政府が安全性のアピールにフル活用。

2012年1月7日土曜日

「原則40年で廃炉」は再稼働への画策と延命へのめくらまし。これで「原則40年で廃国」まちがいなし。

【ただちに危険だ! 原発通信】№33

2012.3.11「100万人デモ」でただちに全原発廃炉だ!


細野原発担当大臣が原発の運転期間を原則40年とする法案を発表した。これはことし5月に定期点検ですべて停止する原発に危機感をいだいた、野田政権や経産省、経団連など、原発利権集団の原発ムラがたくらんだ再稼働への画策だよね。そう、原発でまだ一儲けも二儲けもするための延命策なんだ。

40年で廃炉といっても、一番新しい北海道の泊原発なんて運転してまだ3年だから、あと37年も動き続けることになる。また、2007年の新潟県中越沖地震(震度6強)であわや「フクイチ大事故」の先例となりかけた柏崎刈羽原発は最古の1号機(27年運転)でもあと13年、最新の7号機(15年運転)になるとあと25年も運転することになる。そして大地震と大津波の危険から逃れられない浜岡原発5号機(7年運転)、伊方原発3号機(18年運転)、島根原発2号機(23年運転)などは、まだ17年から33年以上も動くことになる。

こんな法案が通って、「原則40年で廃炉」なんていってるまに、ふたたび大事故が起こるだろう。「原則40年廃炉法案」は原則40年で「廃国」「廃北半球」「廃全地球」への悪魔の法案である。

しかもあくまで「原則」だ。原則には「例外」がつきもの。ほら日本語大辞典にもこうあるよ。【原則】特別の例外が起こり得ることを念頭において、一般に適用されるものとする基本的な考え方。

きっと40年たったら、「老朽化」ではなく「高経年化」であり、部品を取り換えれば、まだまだ運転できるといって、運転しつづけるだろう。

この「原則40年で廃炉」の野田政権と財界とは、その思惑が軌を一にしている。経団連会長の米倉弘昌は、朝日新聞のインタビューでこんな発言をしているんだ。

――経団連は、原発を早く再稼働するよう求めていますね。

「短期的には原発がないと不可能だと思う。もう日本は経済成長をやめるとか、電気を使わない経済成長だとかはあり得るのか。そっちの方向に産業をシフトすることは、これから20年かけても難しい。そうすると何らかの形で定期検査済みの原発を、十分に安全確認し、住民の理解を得て再稼働させていくことが必要だろう」(朝日新聞201211日)

どうだろう。政と財のあうんの呼吸だね。まだまだ、すくなくとも20年は原発で儲けたいのだろう。

ところで、この米倉会長の発言は、まるで日本経済の成長は原発にかかっているとか、電気は原発でしかつくっていないように語っているけど、昨年、日本経済をどん底に落とし込め、海外の日本への信頼を失墜させ、また電気供給を不安定にしたのは福島第一原発事故であることはまちがいがない。

原発が日本経済をだめにし、原発が電気の安定供給をだめにしたのであって、その逆ではない。原発に依存したために、こういう事態をまねいていたのだ。それをまるで「原発が動かないから、こういう事態になった」というような逆の意味にとらせる、ことばのトリックはやめてもらいたいものである。

ぼくはこれ以上の経済成長なんて求めないけど、もしぼくが経団連の会長で経済成長をしなければならない立場にあったら、地震や津波で爆発して使い物にならない発電プラントなんかに依存しないし、ウランや石油、天然ガスといった海外からの輸入にたよるエネルギー資源にも依存しない。もうそれは、自国でまかなえる再生可能エネルギーにシフトするしかないだろう。こんなことは小学生だってわかることだけど。

それにぼくは、これは原発の放射能汚染や放射性廃棄物等の問題については触れずに、エネルギーについて「純経済的」な見地から述べているのだ。そう、経団連や政治家、それに原発ムラの人びとにとって命より大切な金儲けのためにも、原発はやめたほうがいいよ、と言っておるのだよ。














2012年1月1日日曜日

ことし3.11に100万人で東電、経産省、国会を取り囲み、すべての原発を廃棄しよう!

【ただちに危険だ! 原発通信】№32

2012年は人類史にとってターニングポイントになるだろう。ことし日本の原発を廃棄するかどうかによって、人類は生き延びるかどうかが決まる。

昨年3.11の東京電力福島第一原発事故によって、農民が自殺に追い込まれ、15万人が避難生活を余儀なくされ、福島や東北・関東は放射能汚染され、数千万人の住民が被曝し、大地や海が汚染され食べものが毒となった。

さらにわれわれは、やがて生じるかもしれない健康被害におびえる。これから数年後、数10年後、いったいどれだけの人びとが、この事故による被曝で病と死をまねくのだろうか。ちなみに、欧州議会に設けられた欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、「2061年までに福島原発の半径200キロ圏内で417000件のがんが発症する」という予測を出している。

そしていまも、あの一連の原発大爆発を上回る危機がある。大地震があれば、無防備なフクイチの1号機から4号機まで、ひとたまりもなく崩壊し再臨界の悪夢が現実となるだろう。

そんなとき、日本政府・野田政権は昨年12月に「事故収束宣言」なるものを発した。そう、彼らは「宣言」することで、国民の原発事故への関心をそらせ、一刻も早く幕を引きたいのだ。なぜか。原発を再稼働させたいからにきまっているじゃないか。

原子力ムラと称せられる原発利権集団は、たとえ福島を、東北・関東を、日本列島を、いや地球を放射能まみれにしても、自分たちの利権を欲するのだ。自分たちも被曝からまぬがれることができないのに、それでも彼らはあくなき利権を求める。そういう人間が存在することは信じられないことなのだけれど、しかし事実として実在する。

地球が誕生した46億年前、生物の生命に有害な放射線(宇宙線)がこの惑星に降り注いでいた。それから数10億年の膨大な時間を要して地球磁場やオゾン層が形成されることで、放射線をふせぐことが可能となり生物が生きていける環境となる。

放射線からのがれることが、生命活動の絶対条件である――。

これがわれわれ地球環境に生息する人類の原初の教えなのだ。放射線と生命とは、「死と生」という対極の関係にある。この関係を「宇宙のオキテ」とよんでもいいだろう。この絶対的なオキテを破ったとき、地球に生命が存在できなくなる。

そして、そのオキテを人類は核エネルギーを開発することで破った。原爆をつくり、原爆と同じ原理で動く原発によって、地球を何十回と破壊する放射能を生みだしてしまったのだ。

原発運転以来、膨大な核廃棄物を生み出し、この「死のゴミ」が無害になるまで10万年を要する。われわれはたった数10年の電気エネルギーを得るために、10万年後の人類や生物にまで危機的影響をあたえるのだ。

しかも、これは原発を「安全に運転」できたとしても、である。ひとたび事故を起こし、原子炉が破壊されれば、もうわれわれは放射能というものをまったく制御できない。チェルノブイリ事故から25年たったが、いまだに「収束」されていない。現在もチェルノブイリ原発では、日々3000人の職員が危機管理にあたることで、その被害の拡散を抑えている。チェルノブイリ周辺の地域はいまも住むことはできず、これからいつ安全に住めるのか、その見通しはまったくたたない。

このチェルノブイリの現状は、将来の福島や東北・関東の放射能汚染地域と重なるだろう。われわれのなしたことの罪はかぎりなく大きい。われわれは人類史、いや地球史的な罪悪を犯している。もうこれ以上の罪を重ねることがあってはならない。

野田政権は、ことし一段と明確に原発の再稼働へと舵をとることはあきらかだ。もはや政治も司法も、原発を止める、廃棄する力にはならない。われわれ一人ひとりの力を合わせることでしか、原発から脱することはできない。

では、どうすれば、脱原発は可能となるのか。簡単だ。東電、経産省、そして国会を100万人で取り囲めばいいのだ。それを10日間つづければ脱原発は達成されるし、もしそれを原発推進派と結託する権力者が拒否するなら100日つづければいいのだ。そうすれば、この国の権力構造もろとも原発は廃棄されることだろう。

ことしの311日は日曜日だ。デモと集会には最高の曜日である。ぼくは、いますべてのこころあるひとに、こう呼び掛ける。20123111446分。脱原発と人類の生存のために立ち上がろう!