それは小学生の娘の「甲状腺に小さな袋状のものが見つかった」というもの。
「子ども」「甲状腺異常」とあれば、たちまち核分裂生成物「ヨウ素」が原因と想起する。
そう、これは福島原発事故による学習効果だ。
ヨウ素を取り込み蓄積するという機能がある甲状腺は、ヨウ素が取り込まれると甲状腺ホルモンとなって放射能を放出しつづけ、甲状腺がんを引き起こす、という……。
チェルノブイリ原発事故で住民に甲状腺がんが多発したこと、さらに胎児や乳幼児、若年層は細胞分裂が活発なことなどから、成人よりも放射線の影響を受けやすいことも、ぼくたちは嫌というほど学んだ。
そして、「甲状腺の小さな袋状」は、放射線による晩発性障害の「拡大の始まり」かもしれない、ということも。
原発事故後、わが家(柏市内)の近くの通学路を、それ以前とまったくかわらず、マスク一つせず、多くの小さな子どもたちが「ふつうに」歩いていた。
公園では、幼児が砂場で無邪気に遊び、小学生低学年が遠足で公園の芝生の上で弁当をひろげていた。
――そんな光景を思い出す。
さて、この小学生の娘の母親は、事故直後の初期被曝を心配してエコー検査を受けさせた結果、「甲状腺に小さな袋状」が見つかったのだが、ほとんどの子どもたちはエコー検査を受けていないのが現状だ。
柏市はエコー検査を助成せず、健康調査は国の責任でおこなうように求めている。
だが国は、福島県外の住民の健康管理を「有識者会議で検討」とするだけで、まったく放棄している。
この国は、子どもたちの健康がないがしろにし、身捨てたのだ。
柏市は、事故直後の対応は消極的だったが、市民の根強い働きかけがあって、それなりに積極的な放射能防護に乗り出す。
市内の幼稚園や学校の除染は12年度中に完了し、公園も大半が終わっている。
また食品に含まれる放射能測定も無料で実施し、ホールボディカウンターの内部被曝検査には、市が独自に助成金を出している。
だけど、なぜか、子どもの甲状腺検査は放棄されている。チェルノブイリで頻発している、というのに……。
(参考・引用資料『朝日新聞』第2千葉、2013年10月31日朝刊)
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