「ベラルーシ保健省のデータによれば、大惨事直前(1985年)には90%の子どもが「健康といえる状態」にあった。ところが2000年には、そのようにみなせる子どもは20%以下となり、もっとも汚染のひどいゴメス州では、健康な子どもは10%以下になっていた」というのだ。
さらにベラルーシのほか、ウクライナ、ロシア、その他、欧州各国でも、衝撃的な被害に見舞われていることが報告されている。
このような実態をあきらかにしたのが、『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)で、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの4人の専門家が執筆にあたった共著である。
本書は5000点以上のデータをベースに系統的に分析した、まさにチェルノブイリ事故被害の全貌に迫った信頼すべき貴重なものだ。
そして、フクシマを体験した日本人にとって、最高の教訓となる警告の書でもある。
冒頭にもどろう。「健康な子どもは10%以下」とあるが、この事実に福島をはじめ、東日本などで被曝した地域の子どもたちの数年後の姿を連想するのは、ぼくだけではあるまい。
一説によると、東電福島第一原発事故で環境に放出された放射線量はチェルノブイリ事故の数倍にのぼるともいわれる。だから、なおさらだ。
本書によると、チェルノブイリ原発事故の放射能汚染による健康被害は、がんなどの腫瘍性疾患をはじめ、各種の健康不調や病気、症状、そして老化の加速など、実に多種多様にわたっている。そして事故後、4年から5年を経て、その健康被害数は統計的に有意となり、年を追うごとに増加した。
ちなみに、「老化の加速」というのは、しみやしわが増えるという程度のものではなく、老化を主因とするありとあらゆる病気疾患(たとえば糖尿病)にかかりやすいことを意味し、10年以上寿命を縮めるということである。
そう、被曝することは命を削り取られることを意味する。
ところで、東大医学部付属病院放射線科准教授の中川恵一は「われわれにとっての被曝の問題とは、がんが増える可能性があるということだけです」と述べているが、この事実になんとこたえるのだろうか。
また東大医学部はこんなことを公言した「准教授」に、どういう対応をしたのか、するのか。もし、不問ということであれば、東大医学部は中川の意見を認めると理解していいのか。
本書にはデータに裏付けられた、こんな一節がある。
「電離放射線が健康に及ぼす影響にしきい値はない」
「自然のバッググラウンド放射線[環境放射線]にごく微量の放射線が追加されるだけで、被曝した人やその子孫の健康は遅かれ早かれ統計学的な(確率的な)影響を受ける」
以上の指摘に、100ミリシーベルト以下の被曝は健康被害はない、と公言した日本の専門家たちは、なんと抗弁するだろうか。
日本の放射能汚染地域から、いまからでもいい、せめて子供たちの一刻も早い避難を訴えたい。さらに日本政府の人道的対応を求める。いま、この国の子どもがあぶない!
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