……東電の主流部門である企画部のエリートが、馬淵の秘書官にこう苦情を言った。
「遮水壁、やめてくださいよ。株主総会があるんですから」
6月28日に株主総会が予定されていた。プラント屋と土木屋の対立に加えて、経営中枢が介入してきた。
経営陣は「遮水壁の費用を計上したら、他の廃炉対策の費用も計上しないといけなくなる」との不安を抱いた。1千億円の債務認識がアリの一穴になることを恐れたのだ。
(『朝日新聞』2014年1月10日朝刊、プロメテウスの罠「汚染水止めろ8 債務超過は避けよ」)
【引用終了】
以上は、2011年6月半ばのことである。
「馬淵」とは当時、首相補佐官だった民主党の馬淵澄夫だ。
馬淵は山から流れ込む地下水をブロックする地下遮水壁の必要性をはやくから認識し、その建設をいそいだ。
ところが、東電は株主総会を乗り切るために遮水壁の費用計上を渋ったのだ。
そして、ご覧のとおり、遮水壁は造られず、汚染水はじゃぶじゃぶと海へ流出しつづけている。
そう、いま、このときも。
株主総会を乗り切るために遮水壁を造らないということは、自分たちの会社をまもるために、生命の海に10万年は消えない猛毒を垂れ流すことを選んだ、ということである。
これはつまり、東電幹部は、自己利益と全地球の生命存続を天秤にかけ、前者を選択したわけだ。
これはけっしておおげさではなく、科学的事実に基づいている。
「遮水壁」と「株主総会」。
これを並列に置くことに、筆者は激しい違和感をおぼえるが、東電はこの両者を並列にして株主総会を優先したのだ。
このようなメンタリティを幹部が有する会社だから原発事故対策がおろそかになり、史上最悪の原発事故をまねいたのだ。
そして、あれほどの事故を起こしながらも、まだ東電は自己利益を優先して柏崎刈羽原発の再稼働をたくらんでいる。
なんと、恐ろしい企業、いや人間集団なのだろう……。
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