その周囲は38キロあり、山手線の34.5キロと比較すると、その大きさが想像できるだろう。
ここはかつて風光明媚な景勝地で、この沼を見下ろす我孫子の高台には志賀直哉、武者小路実篤、柳宗悦、中勘助、滝井孝作など、白樺派の文人たちが住んでいた。
現在では夏になると柏市と我孫子市が共催する花火大会があり、沼の周囲には大勢の人たちがつどう。
ぼくの好きな我孫子図書館はこの沼のすぐ畔にあり、そこには犬も入れる大きな公園があって、愛犬が元気なときはよく散歩に連れて来た。
また、この沼はコイ、フナ、ウナギ、エビ、そして名物の佃煮となるモツゴなどが獲れる豊かな漁場だった。
しかし、この沼が人の食用として獲れる魚の漁場だったのは、2011年3月半ばまでだ。
これ以降、この沼で獲れた魚を、ぼくたちはいっさい食することができなくなり、この沼で生計を立てていた漁師たちは、漁に出ることができなくなった。
その理由は、もちろん東電福島第一原発事故による放射能汚染のためだ。
手賀沼が「日本一」で有名だったことがある。
それは「日本一汚い沼」という、あまり名誉な一番ではないが。
大規模な浄化が進み、10年以上前に「日本一」は返上した。
日本一汚い沼で獲れた魚でも食用にすることはできたのだけど、一度の原発事故で、もうこの沼で獲れた魚をぼくたちは食べることができない。
放射能汚染というものが、いかにとてつもなく激しい「汚染」なのかが実感できる。
この沼に漁に出られ、獲れた魚を食べることができるのは、いったいいつの日なんだろう。
数十年先か数百年先、それとも……。
ああ、ぼくたちの世代は、なんて恐ろしいことをしてしまったのだろう。
先祖にも、そして未来に生きる人たちにも……。
きのう25日、安倍政権は原発の再稼働を進めるエネルギー基本計画の政府案を決定した。
(参考資料『朝日新聞』ちば東葛面2014年2月26日朝刊)
2 件のコメント:
手賀沼の近くに養魚場が有るかとおもいます。
先年亡くなりました親戚のおじさんが以前働いていました。
おじさんの子は市川市と白井市に住んでいて事故当時、小中学生の子供がいましたので晩発性の影響を心配しています。
コメントありがとうございます。
そうですか、ご心配ですね。
晩発性障害はチェルノブイリをみると3年4年あたりから急増しますから。
ご無事を祈ります。
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