小泉純一郎元首相が大久保真紀編集委員との会食の場で、原発推進から反対へ「変節」したいきさつを吐露している部分である。
小泉の「原発ゼロ」発言は、原発反対派と推進派双方の賛否が入り乱れた物議モノである。
小泉が政治家であったころは、もちろん原発推進であり、首相在任中はその稼働のいわば最高責任者なのだから、この発言が物議を醸すのも無理はない。
だから、小泉の「原発ゼロ」に推進派がびっくらこくのは当然としても、反対派の中には、この発言をストレートには受け取らず眉に唾をつけた人もいたのだ。
まあ、ここでは小泉の真意はともかく、彼のナマの声を聴こうではないか。
原発推進から原発ゼロに変節したのも、心を揺り動かされた何か大きな理由があるに違いない。そう思って質問した。小泉さんを変えた一番のものは何ですか?
「電事連(電気事業連合会)の言ってること、ウソじゃん」。私の目を見据えて、強い口調でまくしたてた。「専門家が『安全で、コストが安い』『脱石油にはこれしかない』と言えば信用しますよ。何年もオレたちにウソを言ってきた。これですよ。こっちは原子力の知識なんかないんだから。3・11以前はそんな関心もなかったし。あれほど制御しがたいものとは知らなかった」
だまされたと思ったんですか。あえてそう聞くと、「そうだよ、思ったよ」。
じぇじぇじぇ。原発ゼロに背中を押されたのは、官僚や専門家にだまされたことに気づいたからなんだ。まるでオレオレ詐欺の被害者みたい。同じことを何度も尋ねたが、福島の被災者への言及はなかった。
じぇじぇじぇ。5年半も首相を務めた最高権力者がだまされたと嘆き、怒っているとは。でも、よくよく考えれば、日本はとんでもない国だ。正確な判断材料が一国の命運を左右する首相に示されず、安全神話を信じさせられてしまうのだから。小泉さんの変節は人間として何となく納得できるような気がした。(『朝日新聞』「ザ・コラム」2013年12月15日)
【引用終了】
さて、このやりとり、どうですか。
まあ小泉という人、だまされたからといっても、首相という立場で原発を動かしたのだから、無責任このうえない。単に、「だまされた」で済まされるものでもあるまい。
ただ、自分の非を認めて、きっぱり「変節」するのは正直といえば正直ではある。これからもぜひ、その「原発ゼロ」を貫いて、安倍政権の原発再稼働を止めてもらいたいものだ。
ぼくは原子力、原発、核エネルギーというものは、地球を全滅させる悪魔のパワーを秘めたものであり、それを人間はコントロールしえない、という認識のもと反対を唱えてきた。
まあ、こんなこと、ごくふつうの理解力があれば、だれだってそう認識するはずなんだけど、それがいまになってかつての最高権力者が「あれほど制御しがたいものとは」と吐露するとは、いささか驚きだ。
もっと、はやく気づけよ! おっせーだろ。……と、マジに思う。
首相の時代に気づいていれば、3・11もなかったし、日本中の原発が廃炉となっていたはずだから。
ところで、安倍晋三首相はどうだろう。
福島原発事故を体験したからには、小泉のように「だまされ」とはいかないはずだ。
彼は原発の危険性を承知のうえで、核エネルギーという悪魔のパワーを、政治的パワーとして利用しようとしているのではないか。
政治を軍事とよんでもいいのだけど……。
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