【ただちに危険だ! 原発通信】№38
昨夜(1月29日深夜)放送されたNNNドキュメント‘12「3.11大震災シリーズ27 放射線を浴びたX年後 ビキニ水爆実験、そして」(南海放送制作)を観た。
そして、ビキニ被災者とフクイチ被災者のX年後の姿が重なった。この番組の制作に8年をかけたが、それだけの時間を費やしただけの価値ある、そして非常に考えさせられる内容だった。
ぼくたちがマーシャル諸島ビキニ環礁水爆実験での被災者といえばすぐに想い浮かべるのが「第五福竜丸」である。
――1954年3月、このマグロ漁船の乗組員はアメリカの水爆実験の死の灰をモロに浴び、半年後この船の乗組員である久保山無線長(当時40歳)が放射線障害で亡くなった――という印象と記憶だ。
しかし、ビキニ被災者は第五福竜丸の乗組員だけではなかった。当時、延べ992隻の漁船が被曝した魚を廃棄した。乗組員241名が被災し、1988年5月現在で77名が死亡し、この内61名ががんによるものである。なお、ウィキペディアによれば2万人が被曝したという。
たとえば、その漁船の一つ「第五住吉丸」の乗組員11名の内8名ががん(胃がん5名、肺がん3名)で亡くなっている。その廃棄された被災から35年後の第五住吉丸の船体から、セシウム137、ストロンチウム90などが検出された。
番組は当時の乗組員やその妻たちから生々しいことばを聴きだす。「新生丸」乗組員「船に乗っていた人間がどんどん50代、60代で亡くなっていく」。乗組員の妻「皆、若くして、ほとんど亡くなりました」。「バタバタと死んだ」。
そして、死んでいった彼らは、日本政府やアメリカ政府からなんの救済もなく、また国民に知らされることもなかった。そう、闇に葬られた被曝者である。被曝から58年後にようやくテレビによって、この実態があきらかになったわけだ。
このビキニ水爆実験から7か月後、日本政府は突如「まぐろ放射線検査を中止」することを決める。その4日後、アメリカの責任を追及しないことを条件に、アメリカが200万ドルの見舞金(賠償金という名目ではない)を支払うことで、日本政府はこの事件の幕を引いたのである。
ぼくはこのビキニ被災とフクイチ被災とがオーバーラップする。これから数年、数十年たって、東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染(外部被曝、内部被曝)による病気や死亡であっても、「因果関係は認められない」とか「たばこやアルコール、ストレスなど他の原因によるがん」、あるいはこのフクイチ事故そのものが風化していることなどによって、救済されることなく、闇に葬られるかもしれないと。
そして、フクイチ事故の被曝者、避難者への東京電力の態度が、アメリカ政府と重なるのだ。そう東電の原発が撒き散らした放射性物質を「無主物」と責任逃れのために言い張る東電と、7億円(200万ドル)で責任を逃れたアメリカ政府である。
また、日本社会の「空気」も同じだ。漁船の乗組員の妻は「被曝して補償を求めた船員は船には乗れない時代だった」と語っている。広島・長崎の被曝者、水俣病の被害者など、この社会では被害者が差別や偏見を受けるという実態がある。
番組の最後、乗組員の妻はこう語る。「いつの時代にも弱いものにしわ寄せがくるというのは、いつの時代も一緒」この「いつの時代も」とはこのフクイチ事故の「現在」もである。
また、生存している乗組員の一人は、自分が放射線被害の影響が出ていないことについて、「帽子、カッパを着て防護していた」と述べる。防水のための服装が思わぬ救いになったのだ。この事実も非常に示唆的だ。
現在、すくなくとも年間1ミリシーベルト以上の放射線があるところでは、外に出るときはマスクをして外部被曝を、そして口にする飲み物、食べものは十分に注意して、たとえ微量といわれる線量でも内部被曝を避けるということが自分や子どもの身をまもるということを、この乗組員は教えてくれている。
果たして、フクイチを経験した日本人は、2011.3.11からX年後、どういう末路をたどっていることか。
なお、この番組は2月5日11時(BS日テレ)、18時CS「日テレNWS24」で再放送される。
2 件のコメント:
失礼ながら作家であられるなら、テレビで言っていた通り「第五住吉丸」の乗組員11名が大凡400ミリシーベルト以上の被曝をされていた事実も記載しないと駄目だと思います。
年間1ミリシーベルトが安全とは言いませんが、この文章を読んだ方が「第五住吉丸」の乗組員11名の方が低線量被曝によって亡くなられていると誤解する内容だと思ったので記載しました。
この記事を読みながら民放各局の夕方のニュースをチラ観。スタジオの和やかな雰囲気と現実とのギャップに頭がクラクラ・・
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