NHKが驚くべき事実をスクープした!
その事実とはICRPの低線量被ばくの国際基準がでたらめだった、というものである。ICRP科学事務局長や低線量被ばくの安全基準を決めた元委員が、その基準の根拠を明らかにした。なんと彼らは「科学的な根拠に基づいたものではなかった」と言ったのだ。
昨夜(12月28日午後10時55分)NHKで放送された「追跡!真相ファイル『低線量被ばく 揺らぐ国際基準』」。この番組は、世界各地で安全とされていた低線量被ばくによって重篤な健康被害が起こっていることを報告、さらにそのICRPの安全基準はどういう根拠でつくられたのか、ICRPの現役幹部委員や基準を作った元委員に直撃取材したものだ。
チェルノブイリから1500キロ離れたスウェーデン北部サーベの住民にがんが際立って増加している。スウェーデン政府が発表した当地の外部被曝線量は年間0.2ミリシーベルトで、ICRPの国際安全基準を下回っているという。
ところが、サーベ住民はトナカイ肉を常食としており、その肉が放射能汚染されていたのだ。スウェーデンの肉の安全基準は300ベクレルで日本の500ベクレルよりも厳しい。それなのに、チェルノブイリ事故から25年たったいま、放射能汚染による被ばくでがんが多発しているのだ。
地元の大学病院の研究者マーティン・トンデル博士が110万人の食べものによる内部被ばくの調査をしたところ10ミリシーベルト以下だったことが判明。これはICRPが影響は少ないとしてきた100ミリシーベルト以下の低線量被ばくに反するものだ。そうNHKのナレーションが言うように「明らかになったリスクがICRPよりも高かった」のである。
そしてNHKの取材陣はアメリカ・イリノイ州に飛ぶ。シカゴ郊外に3基の原発が集中した地域があり、そこではがんなど難病で亡くなる子どもたちが激増している。その原因は地下水に浸透した原発由来の放射性トリチウムである。住民はこの放射能汚染された井戸水を飲料など生活水としてきた。
周辺住民1200万人を調査したところ、この地域は他の地域よりも脳腫瘍や白血病が30パーセント以上、なかでも小児がんは約2倍に増加していることが判明した。そしてその井戸水による年間被ばく線量は1マイクロシーベルト。え、こんな低線量で、と驚くのは筆者だけではないだろう。調査した地元の小児科医は「低線量被ばくが何をもたらすか知ってほしいのです」と述べる。
さらに取材陣はICRPの現役幹部や基準を決定した元委員にカメラを向ける。そして「これまで(ICRP)は低線量被ばくのリスクを半分にしていた」というICRP科学事務局長クリストファー・クレメントの驚愕の言葉を引き出す。
ICRPの「100ミリシーベルト以下はがんのリスクが0.5パーセントで影響が少ない」という基準の根拠となったのは、1000ミリシーベルトの被ばくで5パーセントがんリスクが高まるとされた、広島と長崎の原爆調査によるものだ。ところが、日米合同調査ではその半分の500ミリシーベルトで5パーセントという結果が出ていたのだ。つまりICRPの現在の基準は危険性を半分に値切っていたことになる。
しかもICRPは、原発や核関連施設で働く労働者の基準を、この半分からさらに20パーセント引き下げたのだ。それは原発推進者に配慮したと元委員は告白する。基準が厳しくなれば安全対策の費用に3億6900万ドルの費用がかかり原発の運転に支障をきたすからだ。
アメリカでは原発や核関連施設で働いていた労働者の放射能による健康被害が相次いでおり、その裁判も起こされている。この安全対策費用と引き換えに原発労働者は健康をうしない、がんなどの難病を引き受けさせられたことになる。
そしてこの元委員チャールズ・マインホールドは安全基準についてこう述べる。「科学的根拠はなく、ICRPの判断で決めたのだ」と。その「判断」とは、安全対策費用に莫大な費用がかかるという原発推進派の事情をくんでのものだ。
このようなインチキな基準を決めたICRP組織の背景を取材陣は暴露する。基準を決めたICRP委員17人のうち、13人が核開発や原子力政策の関係者であるというのだ。
日本の安全基準は、ICRPの国際基準に準拠している。そのICRPは科学的研究者の組織ではなく、原発推進サイドに立った「政策的な判断をする集団」である。これは筆者ではなく、NHKの取材者が発した言葉である。
ICRPが決めた基準によって「100ミリシーベルト以下=低線量=なんとなく安全」みたいなイメージが作られてきたが、もう100ミリシーベルト以下は安全ではないことが明確になったわけだ。
さて、筆者は問いたい。ミスター100ミリシーベルトの異名を冠する山下俊一・福島県放射線健康管理リスクアドバイザー、それに女子中高生を前に、野菜不足や飲酒・喫煙のほうが、福島の原発事故による放射線の影響より大きいと言った中川恵一・東京大准教授など、「放射線被害はたいしたことない」と触れまわる原発御用学者たちは、ICRPの基準決定のインチキが明らかとなったいまなんとこたえるのか、ということを。
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