2011年10月5日水曜日

【ただちに危険だ! 原発通信】№11





ただいま空間線量、毎時0.350マイクロシーベルト!
そんな数値を表示した線量計をもったぼくのまえを「いぬのおまわりさん」を歌いながら園児たちが通り過ぎてゆく。



危惧していたことが起こってしまったのか。ぼくは531日に、この「危険原発通信№4」でつぎのようなことを述べた。

ことしの9月後半から10月ごろにかけて、子供に甲状腺がんが出はじめるような気がします。ほんとうに、ぼくの危惧だけに終わればいいと、祈るようにそう思うのですが。

――という一節だ。けど、その危惧が現実のものになってしまったのか。

甲状腺がんではないけれども、福島の子どもから「甲状腺機能の変化」がみつかったのだ。
ネットやテレビ、新聞などでご存知のかたも多いだろうが、福島の子ども130人の健康調査(医師の問診と血液検査、尿検査)をしたところ、10人から甲状腺機能に変化があった。

調査したのは認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と信州大学病院で、7月から8月にかけて実施した。調査対象となったのは、福島原発事故から茅野市に避難していた短期滞在の子どもたち。

130人(73家族)の年齢は、生後6か月~16歳で平均7.2歳。

この甲状腺機能に変化がみられた10人の子どもが事故当時住んでいたのは、福島第一原発から20キロ以内の警戒区域3人、旧緊急時避難区域1人、その他6人となっている。

JCFの鎌田実理事長(諏訪中央病院名誉院長)は「被ばくの可能性は捨てきれない」という。

甲状腺に変化があった子どもの10人すべてが原発事故の被ばくが原因であるとは、調査した機関は断言していない。そしてこの10人が甲状腺がんになるかどうかもいまのところわからない。

ただし、通常における甲状腺がんの罹患率は極めて低く、被ばくが原因の可能性は極めて高い。

130人のうち10人となると約7.7パーセント。この7.7パーセントを福島県の15歳未満の子ども280965人(平成2241日現在)すべてにあてはめると21634人という、ぞっとする数字がはじき出される。

もちろん福島県だけではなく、放射能汚染のホットスポットは県外数百キロ以上に拡散している。この10人の子どもたちと同程度の被ばくをしている子どもは、福島県外にもかなりの数、存在するとみるのが妥当だろう。

となると、この21634人にどれだけ掛け算することになるのだろうか。

チェルノブイリでは原発事故が起きて5年目から子どもの甲状腺がんが激増している。いまから5年後の2016年、これらの子どもたちの運命はどうなっているんだろうか。

今月9日から福島県の子ども36万人を対象とした甲状腺の音波調査が始まる。これからこんな調査報告がどんどん出てきそうな気がする。

今回の調査をもとに、早急におこなう対策は、福島県や県外にもひろがる放射能汚染地帯を除染すること、さらにこれらの地域に在住する子どもと妊婦(もちろん、できればすべての人たち)を避難させること、それに福島県以外の人たちの健康調査の実施である。

ぼくが住んでいる千葉県柏市は年間空間線量が1ミリシーベルトを軽くオーバーする。

わが家の前の道路は、本日(105日午前1030分)は毎時0.233マイクロシーベルト(年間に換算すると2.04ミリシーベルト)あって、細野原発担当大臣が「1ミリシーベルト以上の地域はすべて国の責任で除染する」という地域にあてはまることになる。(ちなみにこれを書いている自宅の机のまえに置いた線量計は5日午後1時41分現在0.107)

こういう地域に住むことは、大人はもちろんだけど、子どもにとってはこの上もなく放射線障害へのリスクが高いこと意味する。他の非放射能汚染地域(こんなタームを使う時代になったんだ!)に住むことができないのなら、せめて可能なかぎりそのリスクを減らすことが必要となることはいうまでもないことだろう。

♪♪♪まいごのまいごの こねこちゃんあなたのおうちは どこですかおうちをきいても わからないなまえをきいても わからないニャンニャン ニャニャーンニャンニャン ニャニャーンないてばかりいる こねこちゃんいぬのおまわりさん こまってしまってワンワンワンワーン ワン ♪♪♪

自宅から車で5分ほどのところに柏市南部クリーンセンターという市の清掃工場があり、その周囲がひろい公園になっている。ぼくは犬の散歩と放射線のモニタリングを兼ねてときどきこの公園にくる。

そして先週のこと、この公園で聞こえてきたのが、みんなおなじみの童謡「いぬのおまわりさん」だった。先頭の保育園の先生が大きな声で歌い、それに合わせて20人ほどのおそろいの帽子をかぶった園児たちが合唱しながら列をつくって歩いている。

いつもならのどかで微笑ましい光景だ。ぼくとビッキー(飼い犬)も笑顔で子どもたちをみていたことだろう。だけど、原発が爆発してから、いつもの光景ではなくなった。

なぜなら、ぼくが手にしている放射線測定器は毎時0.350マイクロシーベルト(地上約1メートルの空間線量)という数値を出していたのだから。

笑顔ではなく、僕の顔はひきつり、園児を引率する保育士の女性たちに怒りをおぼえる。
柏市も保育園や幼稚園、小中学校、それに主な公園の線量測定をおこない、それを公表している。線量のばらつきはあるものの、どこも年間1ミリマイクロシーベルトを超える線量であることはまちがいない。

にもかかわらず、こういう危険ゾーンに園児の集団がやってくるのだ。さすがにこの間、大きな公園にくる子どもたちは減ってはいる。

だけど、まだまだ子どもたちの遊ぶ姿がある。もちろん、こんな公園に、5歳未満の子どもが自分の意思でやってくるはずはない。

大人が連れてくるのだ。大人の放射能汚染にたいする認識ひとつで、子どもの被ばく線量が決定する。

このような柏市の被ばく状況に、同市の小さな子どもをもつお母さんたちが立ちあがり、それまで放射能汚染なんてまったく「我関せず」を決め込んでいた柏市を動かし、学校や保育園、幼稚園の線量測定、除染を実施させたのだ。

ぼくは公園の除染はどうなっているのか知りたくて、柏市の公園管理課に電話してみたところ、柏市は除染するという意向はあるみたいなのだが、それをいつやるのかというとはっきりしない。そう、これまでよくあったお役所的対応の典型である。

「いや、この件は子どもの健康と命がかかっているんだから、そんなこれまでのような対応では間に合わない。時間との勝負なんだ」みたいなことをぼくが言っても、あいまいな返事しかもどってこない。

そこで、ぼくは柏市のなかで放射線対策を担っているという環境課にメールしてみた。その日時が928日の午後1230分ごろだ。だけど、現在(105日午前1130分)になっても、なんの返信メールもない。(いい加減にしてね)

原子力によって利益を得る者に警告する!

日本の一般市民をあなどってはいけない。もはや体制に従順な怒りを忘れたヒツジではない。日本人の大半が腹の底から憤っている。怒りが渦巻いている。

数え切れない導火線に点火された火は、いま巨大な憤怒の爆薬庫に向かっている。チュニジアのジャスミン革命を契機に、ラブで独裁者が放逐され、イギリスで若者が暴動を起こし、アメリカでは貧富の格差に怒ったデモが拡大している。そしていま、そのウエーブは日本列島に訪れようとしている。

日本の場合、貧富の格差に放射能汚染対策や原発推進への怒りが加わる。

「ただちに健康への被害はありません」「これくらいの放射線量なら、毎日食べてもまったくなんの健康への影響はありません」「原発は必要だ」

そんな言葉をテレビで新聞で吐いた、自分の利益のために魂を悪魔に売ったモノドモは首を洗って待っていたほうがいいだろう。

そして、「放射性物質が大量に漏れ出すものではない。20キロ圏内外の地域のみなさんに影響を与えることにはならない」「放射性物質の濃度は20キロを越える地点では相当程度薄まる。人体への影響が小さいか、あるいはない程度になっている」と、原発が爆発したあとに記者会見したあなたも。そうです、首を洗って。当時、官房長官だったあなたですよ。
 

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