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放射性セシウムと人体への影響
「低線量でも内部被曝は危険」
バンダジェフスキー研究
Yu.I.バンダジェフスキー著『人体に入った放射性セシウムの医学的生物学的影響―チェルノブイリの教訓 セシウム137による内臓の病変と対策―』(久保田護訳)を入手した。セシウム137による体内被曝の人体への影響についての、実に貴重な研究報告である。
その研究から導き出された結論とは――。それは、低線量であっても放射性セシウムは人体に病変をもたらす、ということである。
これまで外部被曝はそれなりの研究がなされていたが、長期の内部(体内)被曝についての研究報告はほとんどないとされていた。ところが内部被曝を調査研究していた専門家が存在したのだ。
その専門家とは病理学博士のバンダジェフスキー。1957年ベラルーシ共和国グロドノ州生まれ。元ゴメリ医科大学長で病理学部長。その研究実績はベラルーシ内外で認められている。
内部被曝の研究は人体実験が不可能なことから、放射線がもたらす体内での影響については、小児の甲状腺がん以外には、ほとんどわからないとされてきた。
このことから、一部の放射線専門家は「内部被曝による病気の増加はなく、被曝地域住民の体調不良は精神的影響」などと公言することがあった。ぼくもテレビ(とくにNHKが多かった)でこのたぐいの発言を専門家からよく耳にした。
ちなみに長瀧重信氏(長崎大名誉教授・前放射線影響研究所理事長)は次のような文章を朝日新聞(2011年04月14日朝刊)に寄せている。
「(チェルノブイリ原発事故から)25年たったいま、周辺住民の健康状態に関する国際機関の報告によれば、子どもの甲状腺がんが増加したが、それ以外には、セシウムで高度に汚染された地域の住民も含めて、放射線による病気の増加はまったく認められていない。報告は、現在の最大の問題は放射線に被曝(ひばく)したという精神的影響(PTSD)だと結んでいる。」
体調のわるさは内部被曝が原因じゃなく、あんたの気のせいだ、と言うのだ。
ところが、チェルノブイリ事故で被曝した人たちの病状や病院で死亡した患者の解剖、さらに動物実験から、放射性セシウムの体内被曝と人体臓器の病変が関係していることをバンダジェフスキーは究明したのである。
バンダジェフスキーは著書の結論でこのように述べている。「人体やその器官に入り込むとわずかな放射性セシウム濃度でも極度に危険になり、既存の変貌または合併症に導く」
内部被曝の人体への影響は、がんはよく知られているが、それだけではない。心臓血管系、腎臓、肝臓、免疫系、造血系、女性の生殖系、妊婦と胎児成長、神経系、視覚器官などへの症状や疾患、病変をもたらす。
さらに「セシウム137によって引き起された人間や動物の身体の病理変化は合併して、長寿命体内放射能症候群(SLIR)になる」という。そしてSLIRによって、血管、内分泌、免疫、生殖、消化、排尿、肝胆汁の各系に組織的機能変化が認められるという。
また、とりわけ心臓、肝臓、腎臓にはわずかな体内放射能レベルでも毒性があること。しかもニコチンやアルコールなどの摂取により、毒性が高まるらしい。
内部被曝の影響から人体を保護する方法についても述べている。
「どんな量の放射性セシウムでも発病の原因になりうる」とし、そのうえで食料品の放射性セシウムの基準値を厳しくすることだという。日本の暫定基準値はきわめて高い(緩い・甘い)が、一刻もはやい基準値の見直しが求められるだろう。
セシウム137は主に乳製品やパン(日本人は米も)、肉とくに牛肉、野生のベリーやきのこから摂取されるので注意が必要だ。また「肉と魚は塩化ナトリウムをいくらか加えて煮ると70%までの放射性セシウムが、じゃがいもを煮るときも45%の放射性セシウムが煮汁に残る」という。
なお訳者の久保田護氏は「チェルノブイリの子供を救おう会」代表であり、茨城大学名誉教授である。
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